クライオポンプの構造・基礎知識

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クライオポンプとは

クライオポンプとは、真空容器内へ設置された極低温面に対し、容器内の気体分子を凝縮・吸着することで捕捉し、排気する真空ポンプのことです。機械的な可動部が少なく、油等は不使用。そのため、クリーンで高密度な真空状態を作れるのが特徴です。

このページでは、クライオポンプの修理・メンテナンスを手がける「ラジカル」が、クライオポンプの構造や基礎知識についてお伝えします。

クライオポンプの構造

クライオポンプは主に2段式の冷凍機で構成されています。

  • 1段目高い冷凍能力を持ち、80K以下までの冷却が可能
  • 2段目1段目に比べ冷凍能力は低いが、10~12Kまでの冷却が可能

凝縮を担う15Kクライオパネルと吸着を担う15クライオパネルは、それぞれ冷凍機の2段ステージに設置されています。なお、室内の放射(輻射)熱から保護は、冷凍能力の高い1段ステージに設置された80Kシールドおよび80Kバッフルによって行われています。また、吸着剤の表面が覆われてしまうのを防止するため、凝縮性の気体が浸入しにくいクライオパネルの内側に取り付けられています。

クライオポンプシステムについて

クライオポンプシステムは主に以下のユニットと器具で構成されます。

  • クライオポンプユニット ※冷凍機ユニット含む
  • コンプレッサーユニット
  • フレキホース×2本

上記はそれぞれの図のように接続されます。なお、クライオポンプは大気圧の状態で起動ができません。そのため、再生用の粗挽きポンプを用意する必要があります。

クライオポンプの動作について

クライオポンプが気体を排出するためには、以下のような条件が必要です。

凝固 吸着
蒸気圧:10-8Pa以下 吸着平衡圧力:10-8Pa以下

クライオポンプはすべての気体の排気が可能であり、超高真空を得ることができます。ただし、各種気体が排出可能になるためには、異なる冷却温度が条件として加えられます。たとえば窒素よりも蒸気圧が低い気体の場合は、極低温面が20K以下になることで10-8Pa以下となり、排気が可能となります。一方、水素(H2)やヘリウム(He)、ネオン(Ne)といった蒸気圧の高い気体に関しては、20K以下に冷却された吸着剤によって排気されます。以下は、各種気体の蒸気圧を示した図です。

クライオポンプの動作について

気体排気に伴う動作

気体排出に伴う動作は、気体の種類による特性によって異なります。水蒸気(H2O)の場合は、クライオ面が130Kの温度になった時、蒸気圧が10-8Pa以下に下がるため、80K以下に冷却されている80Kシールドおよび80Kバッフルに凝縮され、排気されます。一方、窒素(N2)、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、アルゴン(Ar)といった気体は80Kという温度では蒸気圧が高くなってしまい凝固しません。そのため、20K以下の凝縮パネル(15Kクライオパネル)の外表面で凝縮され、排気されます。

クライオパネルが排気する主な気体
空気 N2、O2 真空装置粗引き後の残留気体
放出ガス 1 H2O
  • 真空容器の壁面に吸着 ※通常の真空装置としては最大の成分
  • 放出ガス(ガラス、プラスチック、セラミックによる)の主成分
2 H2
  • 真空容器の金属壁内部の拡散放出(超高、極高真空で問題)
  • 高温、溶融金属(特にAl)からの放出(蒸着、スパッタ)
3 CO、CO2、CH4、CnHm
  • 真空装置壁面に付着した汚れ
導入ガス 4 Ar
  • スパッタ装置
5 H2
  • イオン注入
6 O2
  • 酸化物
7 その他

クライオポンプの再生と安全弁

クライオポンプから排気された気体は、油拡散ポンプやターボ分子ポンプによって圧縮され、ポンプの外へと放出されます。しかし、クライオポンプ内の15Kクライオパネルには凝縮と吸着によってため込まれたガスが残留しているため、定期的に放出・再生を行わなくてはなりません。

クライオポンプの再生と安全弁

再生にはクライオポンプを室温まで昇温し、ガスを気体に戻す必要があります。しかし、気体の量が多く、クライオポンプが密閉状態になっている場合は、再生時にクライオポンプ内部で高圧ガスになる可能性があります。こうした自体に備え、クライオポンプには安全弁が設置されています。なお、安全弁は20kPa(gage)にて作動するよう設定されています。

クライオポンプ再生時の注意点

安全弁を塞ぐ、もしくは改造するといったことは非常に危険なので絶対に行わないでください。また、再生時のガス放出バルブとしての使用も厳禁です。安全弁が作動し、シート面へパージガス内のゴミ等が付着し、リークを招く可能性があります。

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